建築・アート見学できる無料ツアーも。「ししいわハウス軽井沢」レビュー

素敵な建築やデザインに囲まれる滞在は、とてもラグジュアリー。たとえ、それが100平米を超えるスイートルームではなくとも。そんな次世代のラグジュアリーを堪能できる世界水準のホテルが、軽井沢の「ししいわハウス軽井沢(SHISHI-IWA-HOUSE KARUIZAWA)」です。

宿泊者のほとんどが外国人旅行客で、このホテルに泊まるためにわざわざ軽井沢まで足を運んでいます。世界的建築家の手がける建物に宿泊し、その土地ならではの料理を味わい、自然を愛するーーそんなラグジュアリー・ウェルネスを体感できる「ししいわハウス軽井沢」の宿泊体験記を、プレスツアーに参加し、取材させていただいたのでレポートします。

ししいわハウス軽井沢とは?はじまりの物語

2018年に誕生した、ししいわハウス軽井沢「SSH No.01」。

「ししいわハウス軽井沢」は美しい建築に身を委ねて滞在を楽しめる宿泊施設。2018年に坂 茂氏による「SSH No.01」、2022年に坂 茂氏による「SSH No.02」、2023年に西沢立衛氏による「SSH No.03」がオープンしています。

「SSH No.01」のパブリックスペース。

坂 茂氏も西沢立衛氏も建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞しており、世界的建築家が手がけた建築に泊まれることが、「ししいわハウス軽井沢」の大きな魅力です。

左からSHOLAのエグゼクティブシェフである岡本将士氏、シンガポールとニューヨークを拠点とするオーナーのフェイ・ホアン氏、総支配人の荻原大智氏。

ししいわハウスの始まりは、オーナーのフェイ・ホアン氏の「世界中で活躍する3人の娘たちと集まれる場所を」という想いから。当初は完全プライベートな別荘として坂 茂氏に設計を依頼したものの、オーナーが利用していない時に他者へ貸すことを検討した時に、軽井沢ではほかの人を宿泊させるには旅館業許可が必要ということがわかり、ホテルへと方針を変更したそうです。

湾曲した建築がユニークな「SSH No.01」。

フェイ氏が依頼したのは、「軽井沢の森を残して建物を作ること」。その結果、「SSH No.01」は建物全体が木を避けるように曲がりくねっています。面白い点は、湾曲した木材を使用しているわけではなく、蜂の巣状の紙で作られたハニカムボードを合板で挟み込んだ、長方形の「PHPパネル」を組み合わせて曲線を描いているという点。湾曲した木材を作るのはコスト増や工期長期化に繋がり、工期が長期化すると環境負荷もかかります。

別の場所でこの「PHPパネル」を作り、現地に運び、組み立て。

建設において最も環境に負荷がかかるのは「建設時」。建設時間が短いほど、環境負荷はかからないとされています。さらに軽井沢は毎年、夏の間は避暑地として多くの人が賑わうため工場をストップしなければいけない、というルールもあります。そこで坂氏が考えたのは、PHPパネルを別の場所で作り、現場で37のフレームを組み立てていく、という方法です。この方法により組み立てにかかった時間は、たったの2日。とても合理的で、かつ環境負荷を抑えたサステナブルな建物となっています。

ちなみに宿泊者は「建築・アートツアー(16:00〜約1時間、10名定員)」に無料で参加可能。コンセプトや建築について、スタッフが詳しく教えてくれますよ。

「SSH No.01」の「スーペリアルーム」がおすすめ。ししいわハウス軽井沢の客室

客室棟「SSH No.01」

「SSH No.01」のリビングルーム。宿泊者はヴィラごとにあるリビングルームと、開放的なグランド・ルームを利用可能。

「SSH No.01」はオーナーの家族への想いからアットホームな雰囲気で、ファミリー向けの客室が多くなっています。例えば「Villa A」は1階にリビングルームと1ベッドルーム、2階に2ベッドルーム、最大6人が宿泊できるヴィラ。そのほか1〜2人で泊まるのに最適な客室もあり、「SSH No.01」は全11室です。

「SSH No.01」の「スーペリアルーム」。定員2名、約30平米。

私が一押しの客室が「SSH No.01」の「スーペリアルーム」。2階に位置し、坂 茂氏がつくりあげたフレームをまじまじと眺めながら、軽井沢の自然に癒やされる空間になっています。

坂 茂氏の建築美を堪能し、窓からは軽井沢の自然が見える、素晴らしい客室。

客室は一般的なラグジュアリーホテルのスイートルームのように広くて、豪華なシャンデリアが飾ってあるわけではありません。しかし、建築美をチェックインからチェックアウトまで存分に満喫できることに、贅沢さを感じました。

どこの客室に宿泊しても、宿泊者全員が利用できるSSH No.01の「グランド・ルーム」。

SSH No.01のグランド・ルームは宿泊者みなが集い、交流できる空間。海外ゲストはほかのゲストとのコミュニケーションを楽しみ、より深みのある旅を楽しんでいるようです。

客室棟「SSH No.02」

1階に客室、2階にレストラン「SHOLA」を備えた「SSH No.02」。

2022年に誕生した「SSH No.02」は1階に12室の客室、2階にメインダイニングのレストラン「SHOLA」や「ザ・ワイン&ウイスキー・バー」を備えた建物。こちらも坂 茂氏が設計しており、大きな柱を中心に構えないことで、開放感のある空間を演出しています。

開放的で、つい足を運びたくなる2階のレストラン。

耐震もしっかり考えられており、三角形の骨組みを単位とした構造となっているのが特徴。さらに窓はラティス状の格子窓が採用されていますが、耐震補強とは思えない美しいデザインです。

「SSH No.02」は2階へと続く、オープンエアのアプローチが美しい。

客室棟「SSH No.03」

西沢立衛氏による「SSH No.03」。

「SSH No.03」は西沢立衛氏が手がけた「和」を感じる建築。外観は真っ黒で力強い印象ながら、岐阜県産のヒノキがふんだんに使われ、室内は温もりを感じられます。

貸切で楽しめるヒノキ風呂の「バスハウス」。

「SSH No.03」にあるヒノキ風呂の「バスハウス(貸切、予約制)」で、ヒノキの香りに癒やされながら全身を温めるのも最高のリラックスに。入浴後は軽井沢の木々に包まれながら深呼吸し、縁側で水分補給するのも気持ち良い時間になります。

ふわふわのバスローブも。ししいわハウス軽井沢のアメニティ

フワフワすぎる上質なバスローブ。海外っぽく、パジャマなし。

歯ブラシなどアメニティもしっかりそろっていて、印象的だったのが「バスローブ」。プロー(Ploh)というブランドで、感じたことのないレベルのフワフワ感でした……!パジャマで寝たい派の人は、ルームウェアがバスローブしかないので、持参するのがおすすめです。

バスアメニティはイタリア・トスカーナ発の「Natural Foundation」。

長野の食材のおいしさを最大限に引き出す。レストラン「SHOLA」

レストラン「SHOLA」のディナーの一品「ムキ茸とポーチドエッグのサラダ」。

料理も重要なウェルネスの一つ。「SSH No.02」内にあるレストラン「SHOLA」では、地元の生産者と直接繋がり、仕入れた食材を使った料理を夕食・朝食で楽しむことができます。エグゼクティブシェフは岡本将士氏。TRUNK(HOTEL)などのシェフを経て、2022年のオープン時よりSHOLAのシェフを務めています。

やまこきのこ園で栽培されている舞茸を取材。丁寧に栽培されているきのこは、本当においしい……!

例えばこの日ディナーで提供されたきのこは、ホテルから車で約30分の長野県「やまこきのこ園」で栽培されたもの。きのこの生育環境にこだわり、おいしいきのこをつくるすてきな生産者さんです。

フレッシュなハーブを使った「ハーブティー」。ホテル内のガーデンで育ったハーブも。

岡本シェフ「ホテルを利用する方は海外ゲストが多く、みなさん長野の素材を活かしたものを味わうことに、『贅沢感』や『ラグジュアリー』を感じていらっしゃるように思います。有機で丁寧に育てられた野菜や腕のいいハンターによる鹿肉などを通じて、長野県の自然の豊かさをそのまま届けたいですね」

現在、公式サイトではFarm Visit & Dinner Package「自然と職人技、洗練された美食を結ぶ特別な食体験(27,830円)」として地元の農場を見学し、SHOLAでディナーを楽しむパッケージも販売中。長野の素晴らしい農場を見学し、岡本シェフの料理を味わうひとときはとても贅沢で、忘れられない体験になるはず!

長野県産ワインと、岡本シェフの料理を合わせると、最高の地産地消マリアージュ。

料理に合わせて長野県産ワインとのペアリングも楽しむことができ、中には少量生産でなかなか手に入らないワインも。ほかにも2000年を最後にウイスキーの製造を終了してしまった軽井沢蒸溜所のウイスキーなど、貴重なお酒を楽しむこともできます。

軽井沢の自然に癒やされるアクティビティプログラム

清らかで、心が洗われる「千ヶ滝」。

予約後、宿泊日当日より前に、ゲストへアクティビティプログラムをメールで送るのもしいわハウス軽井沢の特徴。建築・アートツアー、トレッキング、はちみつ農場見学など、幅広いアクティビティから選ぶことができます。

海外ゲストに一番人気は「Sengataki Waterfall Walk(千ヶ滝トレッキング)」。清らかな川を横目に軽井沢の自然にふれながら歩く、片道約30分のコースです。澄み切った空気を身体に取り入れながら歩き、ゴールには美しい高さ約20mの千ヶ滝が。送迎+ガイド付き(5,000円)のほか、コースを教えてもらって自分たちのペースで行くことも可能です。

頂上から雄大な浅間山を目の前に望める、「小浅間トレッキング」。

心身をととのえるためには、「適度な負荷」と「リラックス」のその両方が必要。「小浅間トレッキング」は標高1655mの低山を往復約2時間かけてスタッフとともに楽しむアクティビティで、途中に急な上り坂もありつつも、最後には浅間山の絶景が待っています。ししいわハウスのアクティビティはほかの業者に任せるのではなく、ホテルスタッフがアクティビティをガイドするのも特徴。軽井沢を知り尽くしたスタッフか案内してくれます(1人25,000円〜、2人以上催行)。

美しい建築に触れ、感性を刺激し、自然に癒やされる特別な滞在ができる「ししいわハウス軽井沢」。実際に宿泊し、外国人旅行客を魅了する、ラグジュアリー・ウェルネスを体感することができました。ししいわハウスは進化を続けていて、今後はウェルネス棟や箱根にSSH No.04がオープンする予定。心のゆらぎを感じている人に、泊まってほしい宿です。

ししいわハウス軽井沢(SHISHI-IWA-HOUSE KARUIZAWA)の住所・アクセス

※訪問日:2025年4月